American Wine Journey::カリフォルニアワイン、アメリカワイン紀行ブログ
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ナパを訪れる観光客のほとんどは29号線というナパを縦に貫くまっすぐで平たんな道路を走り、その両脇に出店のように並ぶワイナリーを数件立ち寄るのみで一日を終えてしまう。
 

ところが、その29号線からちょっと西に外れ、Redwoodという名の道路にのり道なりに進めば、ガイドブックではあまり紹介されていない観光地とはかけ離れたもう一つのナパを垣間見ることができる。
 

29号線からこの道路にのり10分も進めば山のふもとに達するが、突然道幅は狭くなりかつ傾斜も厳しくなる。
 

そこからまた数十分走れば山の中腹に入るが、曲がりくねり中途半端に舗装された道は更に走り難くワイナリーどころか人が住む気配すらなくなる。派手に観光化された29号線でよく見かけるワイナリーの宣伝広告の看板はおろか道案内の標識すら見当たらず、周りを囲む林から明るい太陽が差し込む時間帯でなければすぐに断念し引き返すだろう。ただ、車から降りて道沿いの木々を通り抜けて開けた先の風景を眺めればそこかしこにブドウ畑が広がっている事に気付きホッとする。

 

斜面に植えられたブドウは平地のそれと一見同じに見えるが、よく比べてみるとサイズがやや小さく、幾分成長が遅いようにも見える。
 

このMount Veederの様な山の産地で取れたブドウは29号線沿いにある平地のブドウとは大きく個性が異なる。

 

平地とは異なり斜面に植えられたブドウは太陽の光を直接受ける為皮が厚くなる。かつ水はけが良く痩せた土壌で育つ為水分が少なくブドウの粒が小さい。つまり固形物の割合が水分に対して大きくなり、それがワインに転換されるとより果実味が凝縮しタンニンが力強いスタイルとなる。ただ、Napa Valleyの南に位置するこの場所はSan Pablo湾に近く冷たい海風の影響を強く受ける為、もっと内陸の産地よりも平均気温が低い。言い換えれば、酸がしっかりと残る。
 

そこで作られたワインは、山のワインらしく骨太なタンニンの骨格に豊富な果実味の凝縮感が加わるが、しっかりとした酸味により全体が引き締まった印象を与える。Napa Valleyのもっと北の(もっと暖かい場所の)ワインがジャムのような甘い風味になりがちなのに対して果実味もフレッシュさを残す。赤、白共に作られているが、共に力強くも、爽やかな酸味、フレッシュな果実味を呈する。特に赤は、セージやローリエといったハーヴのニュアンスがあり旧世界の趣がある。

 

Mount Veederの代表的なブドウ品種はカベルネであり、中でも歴史の長いMayacamas Vineyardでは昔ながらの製法で伝統的なMount Veederスタイルのワインを作っている。また、規模の大きなワインリーだが、Hessという作り手はこのMount Veederのカベルネのみを使い、Mayacamas Vineyardよりもやや果実味が豊富で取っ付き易いモダンなスタイルに仕上げつつもこの地のテロワールを上手く表現している。

 

また、Lagier Meredithというワイナリーはシラーに特化した作り手だが、ブドウ品種は異なえど、Mayamamas VineyardやHess "Mount Veeder"のカベルネと共通した個性を持つワインを作っており、3つを並べて飲むとこの地の特徴、テロワールを伺い知る事が出来る。

 

この三つのワインは、造り手のワイン造りに対する考えも、ブドウ品種でさえ異なるが、このMount Veederらしさで大きく共通している。言い換えれば、これがMount Veederのテロワールであり、他の土地では成し得ない個性なのだ。

 

収穫時期にこの地を訪れれば、夕暮れが近づき太陽が西に傾きかけるころには、南のSan Pablo湾から吹き寄せる冷たい風がより一層肌に感じられ上着が必要になる。同じ時間帯に北のHowell Mountain辺りの畑ではまだまだTシャツ一枚で汗ばんでしまう。

 

人間はエアコンの付いた部屋の中に逃げ込めるが、ブドウはその環境から逃れる事は出来ない。その環境そのものを受け入れるしかないのだ。それが年中続く事を想像すればこのMount Veederのブドウ達がHowell Mountainのそれらとは全く異なる個性を呈するのは想像に難しくはないし、飲めば味覚的にもテロワールの違いを鮮明に感じられるだろう。

Napa Valley

2010 09

20

カリフォルニアで最も有名なワイン産地はおそらくNapa Valleyだろう。日本のワイン愛好家の中でもNapa Valleyはカリフォルニアを代表するワインが生産される産地として認識されている。言い換えれば、"Napa Valley"という名前がブランド化し、そのブランドが付いていることによって一定の品質やスタイルを保証しているかのように思われている。

 

まるでそこで作られたワインは全て同じ様な味と品質を持っているかのように思われているが、残念ながら(もしくは喜ばしいことに!)現実はそうではない。

 

Napa Valleyと呼ばれる場所が占める表面積は174平方キロメートルにも及ぶ。これは広大な八王子市と同等の広さだ。言い換えれば、Napa Valleyの中には、山はあるし谷もある、川も流れていれば湖もある。その中にブドウ畑が所狭しと植えられ、急斜面、平地、北向きもあれば南向きも、川沿いの肥えた土もあれば、火山性の痩せた土地も・・・。
 

当然作られた場所によって大きくワインの個性は異なる。

 

多摩川沿いと高尾山のテッペンでは気候も天気も大きく異なり、そこで育つ植物に大きな影響を与える事は容易に想像がつく。当然Napa Valleyのどこで造られたかによってワインの味わいは大きく変わってくる。
 

アメリカではワイン産地をAVAと呼ぶ。実際Napa Valleyの中にも様々なAVAが存在し、それぞれ個性豊かであり(一部を除いて!)、その違いは鮮明にワインの味わいに反映されている。
 

AMERICAN WINE JOURNEY(アメリカワイン紀行)。まずは、カリフォルニアを代表するワイン産地、Napa Valleyの中に入ってみよう!

自己紹介

2010 09

20

麻布十番にあるフレンチレストラン オルタシアのソムリエ 千葉和外です。

 

まずは簡単に自己紹介。

 

オルタシアというレストランはフレンチですが、私の専門はカリフォルニアを中心としたアメリカワインです。

 

もともとフランス料理店で育ったソムリエですので、かつてはワインももちろんフランスワイン漬けでした。それに、私がフランス料理界に入った当時は田崎真也ソムリエが世界一になり、皆さんご存じのその後の活躍を目の当たりにしており、他の若者と同様に心から憧れておりましたので、私も御多分に漏れず(!?)、

 

"フランスに渡り、言葉の壁を打ち破り、なんとかソムリエとして修行し、血のにじむ努力と苦労が報われ、有名三つ星レストランにヘッドハンティングされ・・・"

 

・・・、などとB級サクセスストーリーの夢を持った日本中どこにでもいるフランス料理店のおめでたい若者でした。

 

ただ、あまりにも同じ様なことを考えている同世代の日本人ソムリエがやたらと多いので、それではつまらない、と当時日本人ソムリエが全く興味を示しておらず未開の地であったカリフォルニアに予定変更!

 

カリフォルニアワインの中心であるNapa Valley(ナパ ヴァレー)に三年間滞在し、ワイン醸造、ブドウ栽培を大学で学びその後、地元の老舗レストラン Auberge du Soleil(オーベルジュ ド ソレイユ)に勤務出来る幸運に恵まれました。

 

ここでは、そのNapa Valleyでの経験を中心に、アメリカ中のワイン産地を訪れた時の事を思い出しながら、このアメリカワイン紀行を進めていこうと思います。

 

自家菜園で壁側の一部のトマトだけが真っ赤に熟しているのを発見できた時の喜び。その小さな発見を広大なカリフォルニアという大地で体感できた感動を少しでもワインを通して多くの方々と共感できればソムリエとしてこれ以上の喜びはございません。

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profile

千葉和外 Kazuto Chiba
千葉和外 Kazuto Chiba

1972年6月生まれ。
92年 都内フレンチレストランに入店。ウェスティンホテル東京を経てカリフォルニア州ナパヴァレーカレッジ修了後「オーベルジュ ド ソレイユ」に入店。07年帰国後、西麻布「サイタブリア」シェフソムリエとして2年半勤め、現在は麻布十番のフレンチレストラン「Hortensia(オルタシア)」にてチーフソムリエを勤める。

The Court of Master Sommelier認定Advanced Sommelier
第六回全日本最優秀ソムリエコンクール セミファイナリスト

ワインスクール アカデミー デュ ヴァン講師 アメリカワインクラス担当

hortensia

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