American Wine Journey::カリフォルニアワイン、アメリカワイン紀行ブログ

ナパを訪れる多くの観光客はハイウェイ29号を北上しワイナリーを目指す。ナパに入りいよいよワイナリーが現れると思いきや道の両側に見えるのはショッピングモールや住宅ばかり・・・。

 

やきもきしながらアクセルをふかすと突然視界全体がブドウ畑でいっぱいになる。

 

そこがナパの中心の先端に当たるワイン産地、Oak Knoll(オーク ノール)だ。

 

この辺りに差し掛かると観光客は期待から興奮状態になり、右左と小刻みに首を回し、どこのワイナリーに立ち寄るか吟味しだす。ところがどこに寄っていいかなかなか決まらず、気がつけばその先のOakville(オークヴィル)に辿り着き、目立つ看板のRobert Mondavi(ロバートモンダヴィ)を見つけ結局そこに落ち着き、まんまとマーケティングの天才Mondaviの手法に引っかかるというわけだ!

 

だが、優柔不断さを絶ち切りこのOak Knollで右折し車を止めれば、観光バスに視界を邪魔されないのんびりとした雰囲気を楽しめる。

 

ワイナリーはそれ程ないが、Trefethen Winery(トレフェセン ワイナリー)が代表的な存在で、ワインもこの地のテロワールを表現したスタイルを守っている。

 

ナパは言わずと知れた力強いカベルネの産地だ。それは日照量が多く比較的温暖なためこのブドウが良く熟すためであることは明白である。しかし、このOak Knollは南のサンパブロ湾から涼しい風がコンスタントに入り、かつ午前中は濃い霧に包まれ太陽光線はシャットダウンされる。その為、平均気温はちょっと北のOakvilleやRutherfordよりずっと低く、事実ここのブドウの多くはスパークリングワイン用として使われ、近くのDomaine Chandon(Moet & Chandonグループのスパークリングワイン生産者)に運ばれる。

 

その"ナパらしくない"気候を利用して成功しているのがこのTrefethenのRiesling(リースリング)だ。

 

Rieslingはドイツ系のブドウで温かい気候は好まない。また熟すのに長い月日がかかり、ヨーロッパでは常に秋の長雨の恐怖と闘いながらの栽培になるから生産者はなかなか落ち着かず収穫時期には眠れぬ夜が続く。

 

それを考えれば11月まではまず雨が降らないと保証が付けられるこの産地はうってつけの場所だと言える。降ったとしても乾燥状態のブドウに"リフレッシュさ"を与える程度で問題にはならない。(それでも雨に慣れていないナパのワインメーカー達は収穫時期にちょっとでも雨が降るとパニック状態になるが、ナパで雇われているヨーロッパ出身のワインメーカー達は余裕の眼差しでその騒動をながめている。)

 

このOak Knollの涼しい気候で育つRieslingはアルザスやドイツ、オーストリアにも負けない爽やかな酸味を誇示する。2,3年熟成させれば、このブドウ特有の菩提樹の花やいわゆる"重油香"と呼ばれるキューピー人形にも似た香りを華やかに呈する。味わいはドライで酸味にキレがあるが、カリフォルニアの太陽を浴びている分ジューシーな果実味がバランスを取り鋭角になりすぎない。

 

このOak Knollは、ワインの教科書に必ず紹介されているウィンクラー博士の気候区分を参照すれば、一見カベルネには向かない気候だが、長年の経験による試行錯誤から高品質なカベルネが少量だが生産されるようになった。(この大昔に発表された気候区分を信じてどのブドウを植えるかを決めるのは、同様に大昔に発表されたボルドーの格付けを信じてワインを買うのと同じぐらい危険だと言える。)また、もっと北のナパのカベルネよりエレガントでやや旧世界のニュアンスが感じられる複雑な風味を呈しなかなか面白いワインになる。

 

Chardonnay(シャルドネ)も多くみられるが、これは先に述べたスパークリング用に多く使われるが、普通のワインとしても作られている。カリフォルニアのシャルドネは甘ったるくて飲めないと豪語するブルゴーニュ通の方々に出せばきっと驚くだろう。バランスの良い酸味とふくよかな果実味の組み合わせは、どこかフランスのクラシックなブルゴーニュのマコネー地区のワインを思い出させてくれるが、モダンなテクニックを取り入れた最近のアメリカかぶれのマコンのワインよりもっとクラシックなシャルドネの味わいを堪能できる。

 

"クラシック"といえば、このワイナリーから北に10分ほど走ったところにBistro Jeanty(ビストロ ジャンティ)というレストランがある。ここはナパに長く暮らすフランス人シェフのレストランで料理は非常にクラシックだ。おそらくここは、出来損ないのテンプラを平気で出す昨今のパリのフランス料理店より、もっともっとフランスらしいクラシックな料理を楽しめるレストランだと言える。

 

初めてナパを訪れたのならRobert Mondaviで力強いカベルネを飲み、夜は世界的に有名なFrench Laundry(フレンチランドリー)の最先端のアメリカ料理を楽しむのも悪くない。

 

しかし、ちょっと手前で立ち止まり、Trefethen Wineryで昨今のカリフォルニアらしくないクラシックなワインを楽しみ、夜は低温調理など最新テクニックとは無縁のBistro Jeantyでエスコフィエ風のクラシックなフランス料理を堪能すれば、矛盾にも本来の古き良きナパヴァレーを感じられるから不思議だ。

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千葉和外 Kazuto Chiba
千葉和外 Kazuto Chiba

1972年6月生まれ。
92年 都内フレンチレストランに入店。ウェスティンホテル東京を経てカリフォルニア州ナパヴァレーカレッジ修了後「オーベルジュ ド ソレイユ」に入店。07年帰国後、西麻布「サイタブリア」シェフソムリエとして2年半勤め、現在は麻布十番のフレンチレストラン「Hortensia(オルタシア)」にてチーフソムリエを勤める。

The Court of Master Sommelier認定Advanced Sommelier
第六回全日本最優秀ソムリエコンクール セミファイナリスト

ワインスクール アカデミー デュ ヴァン講師 アメリカワインクラス担当

hortensia

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