American Wine Journey::カリフォルニアワイン、アメリカワイン紀行ブログ
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Colgin "IX Estate" 2004 Red Wine Napa Valley, California

 

カリフォルニアには"カルトワイン"と呼ばれる高額ワインがいくつかある。カリフォルニアワイン好きの中では、これらを飲まなければカリフォルニアワインは語れない、という者さえ少なくない。一方、カルトワインなど味は全て同じで濃いだけだ、飲む価値は無い、と反論する者も多い。

 

どちらも間違いだ。

 

カリフォルニアワインの魅力はその土地を反映した個性の豊かさにある。太陽が強い場所、霧により太陽が遮断される場所、冷たい海風の影響を受ける場所、内陸で常に温暖な場所、山の上、平地、東向き、西向き・・・。

 

それら様々なテロワールを反映した個性豊かなワイン、その多様性がカリフォルニアワインの最大の魅力である。

 

そういったワインは低価格帯にも高価格帯にも存在し、もちろんカルトワインの中にも存在する。また、ワインメーカーのエゴが勝りテロワールを殺してしまっているワインももちろん存在する事も事実であり、これもどの価格帯にも存在しカルトワインの中にもある。

 

つまり、カリフォルニアワインを語る上で決してカルトワインは必須項目ではないし、また、カルトワイン全てがテロワールを無視したワインだとも言えない。

 

オルタシアはカルトワインを始めとした高額ワインの割合は決して高くはない。むしろ、レストラン価格で10,000円前後の価格帯でどれだけ満足度の高いワインを取り揃える事が出来るかに尽力している。

 

とは言いつつ・・・、このカルトワインを2010年度のMy Wine of The Yearに選んでしまった・・・。

 

と言うより、選ばざるを得なかった。

 

それだけ素晴しい!!!!!

 

Colginはカルトワインの中でも代表格だが、"テロワール"という微妙なラインを超えずに個性豊かなワインを作り出している。初代のワインメーカーは言わずと知れたヘレン ターレーだが、このヴィンテージはその弟子であり、現在カリフォルニアを代表するワインメーカーとして君臨しているマーク オーベールだ。(ただ、ターレーやオーベールが関わるワイン全てがテロワールを重視しているとは言い切れない。むしろ逆の印象が強い。)

 

四つの単一畑からカベルネをベースとしたワインを作るが、このIX Estateという畑のワインは、ナパの東側にあるPritchard Hill(プリッチャード ヒル)という山で作られる。

 

山のワインだけに豊富なタンニンによる強固な骨格と濃厚な果実味が形成されるが、コンスタントに西のソノマから吹き寄せる風と標高の高さによる若干低い平均気温により保たれる酸のお陰でバランスが維持され、かつ果実味もフレッシュさを保持できる。また同理由により糖度が上がり過ぎずブドウの長い生育機会が保たれる為タンニンそのものも十分に熟す事が出来る。味わい的にも地理的にもHowell MountainとStags Leap Districtの中間的と言えるだろう。

 

これが一般的なPritchard Hillの特徴だと言えるが、このColginのIX Estateは、この特徴を更に増幅させ、同時に更に凝縮させたようだ。

 

2004年という暑かった年により更に重厚なタンニンが形成されたが決してアグレッシヴではなく骨太な骨格として豊富な果実味の中核に君臨する。香りは大きなグラスから飛び出るほど華やかであり、熟したカシス、ブラックベリーと濃厚だがどこか新鮮さを残し嫌味がない。杉の木や枯葉、タバコと言ったクラシックなカベルネの風味に五香粉のオリエンタルなフレーバー、若干黒コショウのスパイシーなニュアンスも溶け込み複雑。余韻は、強固なタンニンが作り上げたバックボーンをゆっくりと辿るように長く長く伸びる。(デキャンタージュ後2時間経過した時の状態。私はカリフォルニアワインのほとんどはデキャンタージュしないが、Coiginに関してはほぼ全て毎回している。)

 

しかし、この素晴しさは文字通り筆舌に尽くしがたい。言葉の限界を改めて感じる。メディアでも多く取り上げられ、また批評家もこのワインについては多く語っている。しかしこの圧倒的な存在感は、表面を撫でただけのテイスティングノートやしたり顔の論評などを軽々と蹴散らしてしまう。

 

決して安くはない。というより、かなり高額だ。だが、どうしてもカリフォルニアワインの最高峰でありかつテロワールを表現したワインという事なら、私は迷わずこのワインをお勧めする。非常に高額だがその価値は十分にある。

 

とは言え、1945年のムートン、1947年のシュヴァル ブラン、1920年代のロマネ コンティがフランスワインの真髄だ、などと涼しげな顔で語るフレンチのソムリエ達と比べれば、我々カリフォルニアワイン好きの会話などずっと現実的だが・・・。

Napa Valley(ナパ ヴァレー)の両サイドには山脈が走っており、西側のMayacamas Mountains(マヤカマス山脈)の最も北に位置するのがこのDiamond Mountain(ダイアモンド マウンテン)というAVA(ワイン産地)だ。

 

よくお隣のSpring Mountain(スプリング マウンテン)と比較されるが、両AVA共に、テロワールよりワイナリーの個性を打ち出したワインが多く、今一つこれらAVAのそれぞれの個性が掴みきれない。

 

ただ、このDiamond Mountainにカリフォルニアワインを語る上で欠かせないワイナリーがある。

 

Diamond Creek Vineyards(ダイアモンド クリーク ヴィンヤーズ)だ。

 

オーナーである故Al Brounsteinは、まだカリフォルニアに"シングル ヴィンヤード"のコンセプトが存在しない時代(1960年代後半)に、大胆にもこの地でしかもカベルネという"ブレンド"の概念が連鎖的に捉えられるブドウを使い単一畑ごとにワインを造り始めた。

 

Bordeaux(ボルドー)の有名シャトーを訪れ、そこで苗木をスーツケースに山ほど詰め込みその足でメキシコに飛び自家用機に乗り換えナパにその苗木を密輸した、という逸話は地元ではあまりにも有名。(ただ似たような武勇伝がカリフォルニアの至る所で聞こえるようになり特に珍しい話ではなくなったが・・・)

 

畑は4つに区分さている。Gravelly Meadow(グレーヴェリー メドー)、 Red Rock Terrace(レッド ロック テラス)、 Volcanic Hill(ヴォルカニック ヒル)、そして Lake(レイク)。

 

それぞれ個性豊かで、全て素晴らしい。

 

Lakeが最も高価だが最も個性的だと言える。Mayacamas山脈の一部が凹んでいる部分から入ってくる冷たいSonomaからの海風の為に最も涼しい微小気候を持つこの畑は毎年ブドウを十分に熟させてはくれない。ただまれに熟した時の素晴らしさは他の追随を許さない。その気まぐれなミクロクリマの為、1972年から現在までたった8回しか生産されていない。

 

次に涼しい気候で砂利質土壌のGravelly Meadowは力強くもエレガントなスタイル。鉄分を含んだ火山性の土壌を持つ北向き斜面のRed Rock Terraceは3つの中で最も柔らかく芳香性が豊か。南向き斜面で火山灰などからなる白い土壌のVolcanic Hillは最もタンニンが強固な長熟タイプ。

 

濃厚さでインパクトのみを狙った流行りのワインとは異なり、全て長期熟成が十分可能。その長い熟成から複雑な風味をゆったりと醸し出す。

 

これらのワインが若い時の杉や鉛筆の芯などの香りから熟成により発展した、葉巻、オリエンタルスパイス、スーボワなどの"伝統的な"カベルネらしい熟成香にカリフォルニアを象徴する、熟したカシス、ブラックチェリーの芳醇なフルーツ香。

 

これが"伝統的な"製法で作られたクラシックなカリフォルニアのカベルネのスタイルだ。

 

多くの"モダンすぎる"カリフォルニアのカベルネにこの熟成香は見出せない。

 

ブドウを完熟以上にまで熟させ、その過熟ブドウからワインを作るのが原因の一つだと言われている。そして、それが一部の有力ワイン雑誌から高い(且つ無意味な)点数を取るための方程式にもなっている。

 

このDiamond Creekのワインは力強い味わいだが、一線を越えていない。だからといって、ボルドーを模倣しようとして失敗した青臭いカベルネでは決してない。カリフォルニアらしく果実味に富み、かつこの土地の個性を"本来のカベルネ"の枠組みを崩すことなく意気揚々と伝える。

 

もしこのDiamond Creekがお隣のSpring Mountainでカベルネを作ったらこれらAVAの違いを明白に表せるのかもしれない。

 

トレンドに左右されずこの"伝統的な"造りを維持してきたのは、数年前に他界した創始者であるBrounsteinの畑の個性(テロワール)に対する強い信念があるからだろう。

 

そのBrounsteinのスピリッツがこのDiamond Mountainの大地に永遠に眠るのであるならば、この地のテロワールの一部と化し永遠に語り(飲み)継がれる事であろう。

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千葉和外 Kazuto Chiba
千葉和外 Kazuto Chiba

1972年6月生まれ。
92年 都内フレンチレストランに入店。ウェスティンホテル東京を経てカリフォルニア州ナパヴァレーカレッジ修了後「オーベルジュ ド ソレイユ」に入店。07年帰国後、西麻布「サイタブリア」シェフソムリエとして2年半勤め、現在は麻布十番のフレンチレストラン「Hortensia(オルタシア)」にてチーフソムリエを勤める。

The Court of Master Sommelier認定Advanced Sommelier
第六回全日本最優秀ソムリエコンクール セミファイナリスト

ワインスクール アカデミー デュ ヴァン講師 アメリカワインクラス担当

hortensia

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